合理的な行動を前提とするかしないか:時価の考え方
合理的な行動を前提とする法人、しない個人
各税法は、取引価格等については時価ベースでなされることを原則としています。その原則の適用について、会社が行う取引と個人がおこなう取引とで規定内容が異なっています。なぜ、会社の場合と個人の場合で規定が違うのかについて理解しましょう。
会社は合理的な意思決定主体
まず、会社です。
会社は営利を獲得し継続的に事業を営むことが目的です。このため、法人は営利を目的とした合理的な行動をとる主体として、常に経済合理的な「時価」で取引を行うことを前提とした体系となっています。そのため、資産の譲渡等による益金の額は、実際に受領する対価いかんではなく時価をもって認識することを原則としています。
会社が「時価」と異なる価格で取引を行なった場合、合理的な理由がない限り、時価と取引価格の差額について法人税が課税されます。
個人は非合理的な意思決定主体
次に、自然人(個人)です。
個人は、常に合理的に行動するとは限らない主体としてみなします。人間は、時として義理や人情による経済的合理性に矛盾した取引を行うことがあってもおかしくない存在であるということです。
このため、個人が行う取引について、時価と取引価格の差がある場合、無条件に課税を行うのではなく、租税の公平性が損なわれる場合にのみ課税するというスタンスです。
租税の公平性がどのような場合に損なわれるのか、つまり、いくらまで時価と取引価格の差額が許容されるのかについて、所得税法では取引価格が「時価の2分の1未満」の場合、相続税法においては、「著しく低い価額」の場合に、時価と取引価格の差額について課税関係が生じる体系となっています。相続税法の「著しく低い価額」につての明確な基準が設けられていないことが実務において問題となります。
このため、個人がおこなう取引の場合でも、時価がいくらなのかを、常に意識し取引を行うことが重要です。
時価と取引価格が違う場合の税務上の取り扱いをまとめると、次の表のようになります。
【まとめ】
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