遺産の一部分割
遺産の一部分割
一部分割できることの明文化
全部分割だけでなく、被相続人が遺言で禁止場合を除き、一部分割ができる旨が明文化されました。
遺産分割が調わないとき、又は協議をすることができない場合には、一部の分割を求める審判を家庭裁判所に申し立てることができます。一部分割の対象とされた遺産は、分割の内容に従い、分割の対象となっていない残りの遺産から分離独立し各相続人が確定的に取得します。
なお、一部の分割をすることにより他の共同相続人の利益を害する恐れがあるときには、一部分割が認められません。
遺産分割審判の要件緩和
従来の遺産分割審判で一部分割を行うには、①必要性の要件及び②許容性の要件の両方を満たす必要がありましたが、改正後の一部分割の要件には、必要性の要件は求められないことになり、遺産分割を求める範囲が共同相続人によって自由に決めることができるようになりました。
審判可否の要件 | 改正前 | 改正後 | |
①必要性の要件 | 一部分割することに合理的な理由があること | あり | なし |
②許容性の要件 | 一部分割することにより全体としての分割に支障が生じないこと | あり | あり |
改正法の「遺産の一部を分割することで、他の共同相続人の利益を害する恐れがある場合」は、従来の許容性の要件に相応するものです。具体的には、特別受益等について検討し、代償金、換価等の分割方法をも検討した上で、最終的に適正な分割を達成し得るという明確な見通しが得られた場合に、一部分割が許容されると考えられます。
例えば、一部分割においては具体的相続分を超過する遺産を取得することになるとしても、他の残りの遺産の分割の際に、当該遺産を取得する相続人が代償金を支払うことが確実と見込まれる場合には、一部分割を行うことが可能になります。