被相続人と相続人のどちらの所得なのか

概要

所得金額の帰属時期(計上時期)の原則は、実際に支払いを受けた金額(いわゆる現金主義)、つまり収入した金額ではなく「その年において収入すべき金額」です。

「収入すべき金額」とは、いわゆる発生主義ではなく権利が確定した時点で収入を計上すべきものを意味します。ただし、その具体的な基準は、各所得ごとに所得税基本通達で定められています。

死亡後に受領した各収入の帰属については、通常の所得税の計算方法に従います。準確定申告の場合には、被相続人の準確定申告の所得なのか相続人の所得にするのかをの判断が難しい項目があります。前年にどのような基準で確定申告をしていたかを確認する必要があります。

配当所得

配当所得の収入金額の収入すべき時期は、配当の効力発生日で判断するのが原則です。

したがって、相続財産には、相続の開始までに支払いを受けた配当金だけでなく、配当基準日(配当の効力発生日)が相続開始日以前である未受領の配当を含めます。この相続財産に含める配当所得額は、配当収入の金額ではなく実際の受領額(源泉所得税等控除後の金額)で評価します。

上場株式の評価を参照

給与所得等

被相続人の死亡後に支払われた給与等は、相続財産です。ただし、相続開始日と支給期の前後関係で相続財産としての計上額が異なります。

相続開始日までに支給期が到来している場合には、所得税等の源泉徴収後の手取額が、到来していない場合には、所得税は非課税となるため支給額全額が相続財産となります。

また、支給期が到来している場合(何らかの事情により支払いが遅れたとしても)には、準確定申告の対象となります。

この支給期とは、締め日ではなく給与を支払うべき日(支払日)のことです。たとえば、給与は毎月20日締めで、その月の25日払い給与の場合は、25日が支給期になります。24日に死亡した場合は、死亡日後に支給期が到来しているので25日に振り込まれる給与及び21日から24日までの給与のどちらも、準確定申告対象外ですが、相続財産として申告します。

仮に、25日支給の給与が何らかの事情で支払いが遅れ、死亡日以降に支払われたとしても、支給期は死亡日前なので通常の給与所得とみなされます。また、賞与について夏季は7月、年末は12月に支給するとなっている場合には、賞与計算対象期間にかかわらず7月及び12月が支給期となります。

【被相続人の死亡後に支給された給与・賞与】

支給期が到来している 支給期が到来していない
準確定申告の対象 対象
給与所得として含める
(源泉所得税等控除後で支給される)
対象外
(所得税等は非課税、源泉徴収はされない)
相続財産 含める
源泉徴収税額控除後の手取額が未収入金
含める
未支給給与の全額が未収入金

公的年金

死亡した者に給付すべき年金給付でまだその者に支給されていない年金を、未支給年金といいます。未支給年金を請求する権利は遺族の固有の権利とされ、相続財産には含めません。したがって、未支給年金に係る所得は、支払いを受けた遺族の一時所得として計上することになります。

  • 未支給年金は、遺族の一時所得

譲渡所得

譲渡所得があったとする日は、対象となる資産の引き渡しがあった日が原則ですが、資産の譲渡に関する契約の効力発生日を譲渡所得があった日として選択することもできます。

不動産収入

収益不動産の受取家賃収入

不動産収入(例えば、家賃収入)の帰属時期は、賃貸契約で定めている家賃の支払期日で決まります。支払期限到来により家賃収入を計上するため、通常、日割りにはしません。ただし、事業規模の場合には、貸付期間に対応して収入金額に計上する方法が認められる場合があります。

例えば、5月分を4月末に受け取ることになっている契約の場合で5月10日に亡くなった場合、4月末に支払い期日が到来している5月分の家賃は、被相続人の所得として準確定申告に含めます。ただし、継続記帳などしているなど一定の要件に該当する場合は、前受収益、未収収益として期間に対応する部分の家賃の額を不動産収入とすることが認められています。

一方、相続税では、相続開始日に家賃の支払い期日が到来していない既経過分の家賃相当額は、相続財産に含めません。例えば、5月1日から10日までに発生している家賃は、相続財産ではありません。相続税では相続開始日に収入すべき期限(つまり、家賃の支払期日)が到来しているもので相続開始日にまだ受け取っていない地代、家賃その他の賃貸料、貸付金の利息等について、その収入すべき金額によって評価し相続財産に含めます。

分割前の家賃収入の帰属

遺産である賃貸不動産がある場合、相続開始から遺産分割が成立するまでの賃貸不動産から生じる賃料収入は誰に帰属するのでしょうか。つまり、未分割の遺産から生じた収益は誰のものかということです。

遺産とは別個の財産である

遺産が共有状態にある段階で発生した賃料などの果実は、遺産とは別個の財産として位置づけられ、遺産分割の対象に含まれません。相続開始から分割が成立する間の賃料収入は、各相続人が法定相続割合で取得します。

その後、分割が成立した場合でも、その効果は未分割期間中の所得の帰属に影響を及ぼすものではないので、分割の確定を理由とした更正の請求や修正申告はできません。

相続実務では遺産分割対象とするケースが多い

実務では、遺産分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生じるのだから、遺産から生じた収入は、その収益を生んだ財産を取得した相続人のものであると考え、この分割前の賃料収入等の法定果実についても賃貸不動産を取得した相続人が取得することにするケースが多いと思われます。

この場合、法定相続割合で各相続人に帰属するとなっているものを、特定の相続人に寄せることになり、相続人の間での贈与とみなされ可能性があります。

このため、

  • 共同相続人の全員が果実を遺産分割の対象含めることに合意していること
  • 分割前の法定果実の分割内容を相続人間の代償金としていること

を、遺産分割協議書で明確にすることが必要です。

入院給付金

入院給付金の受取人が被相続人であり、かつ、入院給付金が被相続人の死亡後に支払われた場合です。

この入院給付金を相続人が受け取っている場合(保険契約上、被相続人が受取人の契約)には、入院給付金に係る請求権を被相続人から相続又は遺贈によって取得したことになるため、本来の相続財産として相続税の課税対象となります。入金給付金に対して生命保険金の非課税の枠の適用はありません。

一方、保険契約上の受取人が被相続人の配偶者や直系血族等である場合には、相続税の課税対象とはなりません。被保険者及び保険料負担者が被相続人であり、入院給付金の受取人が「配偶者又は直系血族又は生計を一にするその他の親族」の場合には、非課税所得として所得税の課税関係も生じません。

所得控除の適用

所得控除についても通常の確定申告と同じですが、被相続人の所得控除の対象となるのかどうかがポイントとなります。

被相続人の生前に被相続人の生活費や医療費を相続人が立て替えている場合があります。

この相続人が立て替えた金額について、それが「扶養義務の履行としてなされた場合」を除き、その負担額を債務控除することができます。

医療費控除

医療費を支払った時期と支払者が誰かによって相続税と所得税の取り扱いが異なります。まず、亡くなった日までに被相続人が支払った医療費が準確定申告の控除対象となります。

医療費控除は、自分または自分と生計を同一にする親族の医療費を支払った場合に、その全額を支払った人の所得控除とすることができるため、被相続人と同一生計である相続人が被相続人の亡くなった日以降に支払った医療費を、相続人の確定申告で医療費控除することができます。

つまり、被相続人と同一生計の相続人であれば、債務を承継して相続税を減らすことができると共に、医療費控除を受けて所得税も減らすことができます。ただし、被相続人と同一生計の相続人が被相続人よりも所得が多ければ、相続人の確定申告で被相続人の医療費を控除したほうが有利になります。

【所得税申告の医療費控除】

相続開始 支払者 医療費 医療費控除 債務控除
被相続人の
準確定申告
相続人の
確定申告
被相続人 被相続人 × ×
同一生計 × ×
相続人 被相続人 ×
(同一生計のみ)
同一生計 × ×

生前中に被相続人の医療費を相続人が支払った場合

扶養義務者間の当然の支払いの場合には、立替ではないと判断され、被相続人の債務とならない場合があるので注意が必要です。民法上では、民法上の扶養義務者相互間において扶養義務の履行の一環として行われた生活費、教育費、医療費等の負担については債務性がなく、扶養義務の履行として行われていない場合には、債務性があるものとしています。

【相続税における医療費の債務控除】

相続開始前 相続開始後
被相続人負担 現預金の減少のみ
相続人負担 相続人に対する債務として債務控除(扶養義務者間の支払いの場合は債務控除不可) 病院に対する債務として債務控除

扶養義務の履行の一環

扶養義務の履行の一環としておこなわれた場合とは、

①    扶養を受けようとする者に生活資力がないこと

②    扶養としようとする者に扶養能力があること

③    扶養権利者が扶養義務者に対して扶養の請求をすること

例えば、被相続人に十分な資力がある場合には、①に該当するので、扶養義務の履行には該当しません。この場合には、相続人等が支払った生活費や医療費は、被相続人が支払うべきものとなるので、被相続人はその立て替えられた金額に相当する債務を負っていたことになります。

「生計を一にする」とは

必ずしも同居を要件とするものではなく、勤務・療養費等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費・療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

死亡診断書

死亡日までの病院の入院費は、死亡診断書代が含まれていることがありますが、死亡診断書代は医療費控除の対象とはなりませんので、死亡診断書代を除いて申告します。死亡診断書は、火葬許可証をもらうために必要な書類ですので、その費用は相続税の課税価格の計算上、葬式費用として控除できます。

【死亡診断書代の取り扱い】

控除の可否
準確定申告の医療費控除 含めない
相続税申告の葬式費用 含める

社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除

相続開始日までに被相続人が支払った保険料等の額が、準確定申告の控除対象となります。

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