相続の開始

相続とは

相続とは、人が死亡した時に、その人が持っていたすべての財産(借入金のようなマイナスの財産を含みます)が、その人の配偶者や子など一定の親族関係にある人に受け継がれることをいいます。死亡した人を被相続人といい、財産を受け継ぐ人を相続人といいます。

相続の役割

なぜ相続が認められているのか、についていろいろな考え方がありますが、相続は、

  • 遺族の生活保障
  • 遺産形成に貢献した者への潜在的持ち分の清算

という役割を果たすと考えられています。

日本では遺言による相続が必ずしも多くないことや、高齢化した社会を背景に、被相続人が生活を共にしてきた一定の範囲の遺族の生活保障をはかる役割が重要になっています。

相続税とは

相続又は遺贈により財産を取得した者及び被相続人から贈与を受けて相続時税産課税を選択して申告している者が取得した財産の合計額が、基礎控除額を超えて相続税額が生じる場合に、相続税の申告書を提出しなければなりません。

相続税法の「相続の開始があったことを知った日」

相続税法が規定する「相続の開始があったことを知った日」とは、被相続人が亡くなったという事実を知り、それによって自分が相続人となったことを知った時のことです。

通常は、「被相続人が死亡した日=相続の開始があったことを知った日」となります。

相続の開始があったことを知った日

  • 被相続人の死亡という事実を知り、かつ、
  • それによって自分が相続人となったことを知った時

 

なお、相続税の課税価格に算入すべき価額は、相続の開始があったことを知った日の価額ではなく、相続開始の時における価額となっています。

民法の相続の開始日

相続の開始について、民法では「相続は死亡した時に開始する」と定めています。

相続の開始原因が人の死亡に限定されており、戦前の民法のように隠居による相続、つまり、生前相続を認めていません。

被相続人が死亡した瞬間に相続が開始し、その人が所有していた一切の財産が自動的に相続人に引き継がれます。その相続人がその死亡の事実を知っていたかどうかを問いません。
「瞬間に相続が開始する」となっているのは、被相続人の財産や債務に関して一瞬でもそれらの帰属について空白の状態が発生すると、その財産や債務に関する法律関係に混乱が生じてしまうからです。

相続が開始する死亡には、自然死以外に、死亡したとみなす失踪宣告及び死亡したと推定する認定死亡があります。

死亡に関する制度 死亡・認定死亡・失踪宣告

自然死の場合

自然死亡の場合、つまり医師が死亡の確認を行った場合には、その医師が作成した死亡診断書に記載された死亡の年月日時分が、相続開始の日となります。

孤独死の場合

孤独死の場合には、死亡の年月日が不明な場合があることから、民法で、次の表のように状況に応じた相続の開始日を定めています。

状況 相続開始の日
月が明らかで死亡に幅がある場合 最後の推定日の終日
例えば、12月1日から10日の間に死亡したと推測される場合には、12月10日
推定月しか知り得ない 推定月の末日
例えば、12月に死亡したと推定される場合には、12月31日
年が明らかで推定月に幅がある 最後の月の末日
例えば、昨年の9月から10月の間に死亡したと推定される場合には、10月31日
推定年までしか知り得ない その年の最終日
例えば、昨年に死亡したと推定される場合には、12月31日
年に幅がある場合 最後の年の末日
例えば、前々年から前年の間にに死亡したと推定される場合には、前年の12月31日

失踪宣告による相続の開始

失踪宣告により法律上死亡したとみなす制度

死亡の可能性が高いにもかかわらずそれが確定できないため生死不明の状態が長く続くことは法律関係の安定性の観点から好ましくありません。そこで、民法は、失踪宣告の制度を設けています。

失踪宣告とは、生死不明者又は行方不明者に対して家庭裁判所の審判により、死亡したものとみなす効果を生じさせる制度のことです。失踪には、普通失踪と危難失踪(戦争、船舶の沈没、震災など危難に遭遇したときの行方不明のことです)があります。失踪宣告を受けた者は、死亡したものとみなされるので、失踪宣告を受けた人を被相続人として相続が開始します。

失踪宣告

失踪期間満了時が死亡したとみなす日

相続が開始する日である死亡したとみなされる時点は、失踪期間満了時です。

普通失踪の場合は、行方不明になってから7年経過した時、危難失踪の場合には危難が去ったあと1年経過した時に死亡したとみなされます。

行方不明者の死亡の確定が、被相続人の死亡の前が後かで、代襲相続人が異なるので注意しましょう。

相続税の課税時期及び相続税財産評価の時期

相続税の課税時期及び相続財産評価の時期は、失踪宣告を受けた者が死亡したとみなされた時、すなわち、7年の失踪期間の満了の時となります。

この場合の相続税額の計算は、7年の失踪期間満了の時に施行されていた相続税法に基づいておこないます。

相続税の申告期限

相続開始を知った日は、「失踪宣告に係る審判が確定した日」です。審判が確定したことを知った日の翌日から10ヶ月以内が法定申告期限です。

宣告後に現れても返還義務の範囲は現に利益を受ける限度に制限される

失踪宣告をした後に行方不明者が現れた場合、利害関係人の請求により家庭裁判所は失踪宣告を取り消します。

失踪宣告が取り消されると、失踪宣告は初めからなかったこととして扱われるので、失踪宣告を原因とする法律関係はすべて復活し、原則として、相続人が相続により取得した財産は失踪者に返還する必要があります。

ただし、次の制限が設けられています。

  • 失踪宣告後、その取り消しまでのあいだに両当事者の善意でおこなわれた行為は、その効力に影響を与えない
  • 失踪宣告を直接の原因として財産を取得した者は、その返還義務を負うことになるが、無制限ではなく、その財産が原形のまま、又は形を変えて残存する限度で返還すれば足りる

例えば、失踪者の善意の相続人が相続により取得した財産は、残っている範囲で返還すれば良いことになります。

なお、失踪宣告が取り消された場合には、更正の請求をすることができます。更正の請求の期限は、失踪宣告の取り消しを知った日の翌日から4ヶ月以内です。

認定死亡による相続の開始

認定死亡とは、災害や事故などにより死体は発見されないが死亡したことが確実とみられる場合に、取り調べをした官公署(海上保安庁、警察など)が被災した者の死亡を認定及び死亡地の市区町村長に死亡の報告をし、これによって戸籍簿に死亡記載がされる制度です。

この認定死亡によっても相続が開始します。失踪宣告の場合のような家庭裁判所の審判は不要です。

人の死亡の事実の証明は、医師の診断書又は死体検案書によって行われます。このため、死亡したことの可能性が高くても、死体が発見されないと死亡の事実が確認できないため戸籍簿に死亡の記載ができません。

この場合には、危難失踪手続きによることも可能ですが、失踪手続きでは長期間にわたって身分関係が不安定な状態になるため、認定死亡の制度が設けられました。

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